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ISPO香港 プレ大会

東南アジア義肢装具ワークショップ

はじめに

1.斬新上肢義肢
2.往復式歩行器
3.斬新義肢
4.香港印象記

おわりに

報告者:営業部 山田 清隆
学会名:「South East Asia Workshop on Advanced Prosthetics and Orthotics 」
(東南アジア義肢装具ワークショップ)
会期:2002年7月11日〜5月13日
会場:香港理工大学

はじめに

2002年7月12日・13日の両日、ISPOプレ大会であるSouth East Asia Workshop on Advanced Prosthetics and Orthotics に参加した。会場は香港理工大学であった。東南アジア地区でのISPOということで、昨年のグラスゴーで開催されたISPO本大会に比較すると圧倒的に規模も小さく参加者も少なかった。商業展示のブースも10社程度と非常に少なかった。しかし、その10社全てが海外のメーカーであり、世界の義肢装具業界が今何に注目しているかを把握するにはたいへん有意義であったと思う。

会期を通じての演題数は合計で28であるが、同じ内容のものを日本語と中国語でそれぞれ通訳しているので、実質は14演題である。そのうちの半数が下腿義足の演題で占められていた。中でも新しい懸垂方法であるシーリングに関する報告が目立った。シーリングとはシリコンライナーを用いて、吸着式で懸垂する方法である。シーリングに関しては後述する。その他の演題では、筋電義手が2題、交互歩行器が2題、CAD/CAMを用いてのシーティングと足底板が各1題、装具の膝継手での立脚制御に関する報告が1題であった。

中には興味深い演題もあったが、日程の都合上聞けなかったものも多く、非常に残念であった。演題の中からは、筋電義手と交互歩行器についての報告を行いたい。交互歩行器のARGOについて、今回の学会では臨床例の紹介が主で、採型、製作方法、機能等に関する報告はなかった。この報告ではそれらを私が過去に受けた講習から補填する形で掲載する。過去に受けた講習とは、学生時代に北九州の有薗製作所で受講した講習会である。それと共にブース見学から前述のシーリングについて写真を混じえて報告する。
また香港印象記も掲載した。

1. 斬新上肢義肢〜Advanced Upper Extremity Prothetic Limb Fitting
Fillauer社の筋電義手システムの紹介である。オットボック筋電義手システムとの大きな相違は認められないが、ただこちらの方が優れているのは、他社の手先具との互換性がある、という点が挙げられる。いままで1人勝ちしていたオットボック製品は、ひとつオットボックのパーツを使うと、全てオットボックを使用しないと組み立てられないということがあった。しかし、ユーザーの残存機能は様々であり、生活様式、使用方法等もバリエーションに富んでいる。その中で、他社の手先具が選択できないということは、ユーザー、又はDr・義肢装具士にとってもマイナス要素でないはずがない。その選択の幅を大きく広げる事ができるという点で、Fillauer社のシステムの方が優れているであろう。ただし、義手操作における制御システムのバリエーションはやはりオットボックの方が多いように感じた。

どんな義肢装具でもいえることだが、ユーザーに筋電義手に対する理解を深めてもらうことが最も重要になってくることを特に強調していた。そのことに費やす時間は多ければ多いほど良いということであった。なんでも出来ると勘違いさせない事、重量、使用時間の制限、そして、値段。日本ではまだまだこの値段が一番のネックになってくると思われる。日本で筋電義手が普及する為には、機能と値段のつりあいがとれるぐらいに、義手の機能がUPするか、筋電義手の保健適応が通りやすくなるか、このどちらかが必要ではないかと思われる。
筋電義手を含め、日本においてもリクレーション用の義肢装具が一般に広く認められ、障害を持った方々が普通にスポーツを楽しめるようになる為にも、今、取り組んでいるゴルフ用義手をなんとか成功させたいと強く思う。

はじめに 1.斬新上肢義肢 2.往復式歩行器 3.斬新義肢 4.香港印象記 おわりに

ARGO

ARGO

2. 往復式歩行器〜Advanced Reciprocating Gait Orthosis
T.ARGOとは
英国、ヒュースティーパー社(Hugh Steeper Limited)の製品である。航空機用材料を使用して、両下肢機能障害で歩行できない人達のために開発された交互歩行用装具である(図2-1)。

U.適応と目的
1. 適応
・二分脊椎や筋ジストロフィーの患者さんに使用されると言う例はまれにあるが、主に脊髄損傷の方が対象になる。
・脊髄損傷の中でも体幹の保持がある程度しっかり可能なレベル、すなわちTh8〜L4損傷の方にもっともその効果が発揮される。
・Th4〜Th7の損傷者でも何とか歩行は可能であろうと思われるが、あまり良い結果は得られないだろうとのことだった。
・また、Th8〜L4の方でも、適応にはいくつかの条件がある。それらを以下にあげる。

  • 良くなろう、訓練をやるぞ、というモチベーションを持っている
  • 身体に拘縮・痙攣がない
  • 上肢・体幹に十分な筋力がある座位が可能である
  • 体重90kg以内

2. 目的
受傷後、寝たきりもしくは車椅子などに座りっぱなしの患者さんに立位を促し、独立歩行を目指そうというものである。
寝たきりの生活ではもちろんであるが、長期間の車椅子生活でも、普段使わない下肢の骨や筋はどんどん廃用し萎縮していく。

筋肉の廃用性萎縮は顕著に認められるが、骨密度も毎月4%ずつ減少していく。
これらを防止するためにも一日数時間の荷重をける立位歩行訓練は非常に有効な手段の一つである。
また、立位をとることによる血行の促進、褥瘡や膀胱直腸障害など合併症の予防は言うまでもないことであるが、脊髄損傷者の立位、独立歩行への願望は根強く、その心理的効果ははかり知れないものがあると言える。

3,特徴
・ 交互歩行
一番大きな特徴は、後ろに取り付けてあるドライビングケーブルによって両下肢機能障害の方の交互歩行を可能にするという点であろう。ドライビングケーブルは左右の股継手と連結されており、右の股関節が屈曲すれば左は伸展するような構造になっている。また、大人用ARGOには、膝関節にロックケーブルが取り付けてあり、遊脚相での膝屈曲は妨げないが、立脚相での膝折れ防止できる構造になっている。
しかし、健常者の方が装着して歩かれていたが、やはり難しそうであった。かなり体幹を後方に反らさないと下肢が前方へ出にくいようであった。脊髄損傷の患者さんがARGOで歩行する場合はかなりの訓練が必要であるように思われた。


ARGO

子供用ARGO25 Junior

・モジュラー式
下腿のAFO以外はそれぞれにサイズが設定されている既製品であり、パーツごとに患者さんに一番適したサイズを選択し、それぞれを組み合わせて組み立てることになる。しかし、大きく体重別に3種類のARGOがあり、使用するパーツは体重によってある程度決定されることになる。それぞれ体重25kg以下のARGO25 Junior(図2-2)、60kg以下のARGO60、90kg以下のARGO90の中から適切なパーツを選定し、使用する。選択するパーツは以下の4つである。

大人用ARGO60,90
  1. 基本フレーム(大人用Basekit) 8種類
  2. バックチューブ 7種類
  3. 股関節駆動ケーブル
    (Hip Driving Cable) 5種類
  4. 膝固定用ケーブル伸展補助付き
    (Knee Rock Cable) 8種類
子供用ARGO25 Juniorは、SサイズからLLサイズまでの5種類から選択する。
・ ガス・スプリング
脊髄損傷で通常困難な座位から立位への姿勢を空気圧を利用したガス・スプリングで容易に行うことが出来る。ガス・スプリングとは左右に取り付けてあるガス支柱中の空気圧を利用して行われている。装着者が座位から起立を行おうとするとき、大きく股関節を屈曲させることでスプリングが作動し、膝伸展への補助が加わり、立位姿勢への変換が可能となる。立位から座位への体位変換も、股関節を大きく屈曲させることによって、膝ロックケーブルが解除され、容易に行うことが出来る。

しかし、こちらも訓練と経験を要するようで、かなり屈曲させてもスプリングが働かない場合もあれば、スプリングが作動すると、思った以上に大きな力で膝が伸展するので、注意しないと前に倒れる危険すらあるように感じた。

・AFO
ARGOのプラスチックAFOは、モジュラー部品の一部ではないので、製作する必要がある。したがって、下腿は採型を必要とする。このとき、内側のトリミングラインを大腿骨の顆部までかけなければならないため、パテラの上縁あたりまで型を取る必要が出てくる。膝は伸展位で取る。
ヒュースティーパー社では、プラスチックAFOはポリプロで製作されており、内・外果のあたりと、下腿後面に大き目のコルゲーションを入れて補強されていた。上縁のトリミングラインはかなり上まで残してあり、ほぼ膝軸の真下まであるような感じであった。内側顆部は上述のとおり、かけるようにする。これは、内側に支柱がないために、どうしても内側に落ち込んでくる膝を補助するためであると言われていた。また、この部分で体重を受けるようなお話もされていたが、とても支えきれるとは思えなかった。
足関節の角度は、歩くときの状態で90°に設定する。絶えず靴を履いている欧米の社会では、靴を履いた状態で90°になるように設定するそうであるが、それほど踵の高くないリハビリシューズを用いるわが国では、ノーマルな状態で90°に設定すれば良いと思われる。

X.採型と採寸
1. 採型
採型は先に詳しく述べたのでここでは省略する。
2. 採寸
採寸個所は4箇所、すべて座位で行う。

  1. 床面〜膝関節裂劇までの距離
  2. 大転子〜床面までの距離
  3. 大転子レベルの骨盤の幅
  4. 大転子〜体幹の中央までの距離

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シーリングの写真
シーリングの写真2
シーリング
3. 斬新義肢〜Prothetics Advancement
USMC社、Ossur社、Ohio Willow Wood社から新しい下腿義足の懸垂方法であるシーリングが紹介されていた。シーリングとは、ソケットの中から空気を抜き、密閉する事によって陰圧で懸垂するものである。
空気を抜く装置と密閉する為のものが必要になる。上記の各メーカーからそれぞれデザインの異なるものが市販されている。空気を抜く装置は、当初1方向にのみ空気の流れる大腿義足のバルブのようなものが主流であった。いまでも多くはそのような形を有しているが、最新のものは、空圧による足部のエネルギー吸収によってソケット内の空気を抜くものが現われてきている。
ソケット内を密閉するものが、ソケットをシールするという意味でシーリングと呼ばれる。シーリングは、サスペンションスレーブと同じような形で同じような装着方法をとるが、その意味は大きく違っている。サスペンションスリーブは、ソケットと大腿を強く締め上げる事でソケットの懸垂を行うのに対し、シーリングは、強い締め付けは行わない。あくまでもソケット内に空気が入らないようにする事が目的である。スリーブで強く締め付ける事で膝の可動域を制限する恐れがあるが、シーリングではその心配はない。また、スリーブで重力以上の力で引っ張る事による懸垂では、断端に上下方向へかなりの力がかかる。それが断端への過度な力になり良くないのではないかと言われ初めている。シーリングでは、陰圧による懸垂であるので、ソケット内の圧力はスリーブやカフベルトに比べると変動が少ない。このことが、断端へ好影響をもたらすのではないかということであった。
今後、下腿義足ではシーリングが主流になってくるのではないかと思われた。

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香港理工大学学生食堂

香港理工大学学生食堂

4. 香港印象記〜Impression in HONGKONG

香港の正式名称は中華人民共和国香港特別行政区、政体は1997年の返還後一国両制(社会主義と資本主義が併存)をとる。東京都の約半分の面積である1100km2に約700万人が暮らす。人口の98%が漢民族で公用語は英語と中国語(主に広東語)である。通貨は香港ドルとセント。1HK$=100¢≒17円である。(2002/07/12)
香港の第1印象は非常に蒸し暑いということだった。気温は日本の夏と然程変わらないが、湿度はかなり高かった。それだけに、建物の中では必ず冷房がかかっており、しかも、極端に設定温度が低い。その為、中と外の温度差で気分が悪くなりそうであった。さらに、冷房の室外機から水滴がぽたぽた落ちるので歩道を歩いていると、雨も降っていないのに至る所から水滴が降っていた。

はじめに 1.斬新上肢義肢 2.往復式歩行器 3.斬新義肢 4.香港印象記 おわりに

5. おわりに

海外での学会に参加させて頂いた事で、以外と世界は近くにあるということに気付かせて頂きました。交通機関の発展で物理的距離が恐ろしく縮まっていることに驚きました。行こうと思えば、すぐそこに世界があることを痛感しました。そして、義肢装具の業界においても世界との距離が年々縮まっているように思います。輸入品のパーツ・既製品は、日本においてもかなりのシェアを誇ります。それらが必ずしも良いものとは限りませんし、まして日本人の体型・生活スタイルに適応するとは思えません。海外製品の良いところはどんどん取り入れ、現存の製品と比較し、改良する事で日本人に最も適合した製品の開発をしていくべきだと思いました。
また、今回東南アジアの香港で開催されたという事もあり、アジア、特に東南アジアの国々が共に協力し、情報提供し合う事の重要性が注目されてきているのではないかと感じました。地域性は文化の最も大きな要素の一つです。同じ東南アジアという地域に住む者同士が、もっと交流し合いお互いを理解していこうというのが世界の流れだと思います。義肢装具業界においてはまだまだ国境を越えての交流が少ないように感じます。たとえ東南アジア圏だけでも、せめて、お隣の中国や台湾・韓国とは、もっと頻繁に情報の交換できる機会をもっても良いのでないかと強く思いました。

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